新刊というには遅くなってしまいましたが、今日は中央法規出版から発売された『パヤタスに降る星〜ごみ山の子どもたちから届いたいのちの贈り物〜』をご紹介します。
舞台はフィリピンのゴミの山である“パヤタス”。この本の筆者である“山口千恵子”さんは仕事の関係で訪れたパヤタスで人生のターニングポイントとも言える出来事に遭遇します。貧しい暮らしの中で生きる子どもたちを通して学び直すことが沢山あったと言います。それぞれのエピソードが全12話のストーリーにまとめられ、一冊の本になりました。
「あなたは生きていますか?
本当の意味で、生きていますか?」
今、日本に住む私たちがどれだけ恵まれているか?ということを伝えるための本ではありません。時間に追われる日々、病気、経済など、将来への不安を抱えての生活が果たして真に“生きている”と言えるのか?「生きるとは何か?」を改めて感じさせてくれます。
そして、葉祥明のやさしいタッチの絵が物語全体を包み込み、心温まる読後感へといざなってくれる良書です。
“2018年1月20日(土)から3月16日(金)”まで当館にて本書原画展も開催しますので、合わせてこちらもご期待下さい!
それでは、早速どうぞ!
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【書籍名】『パヤタスに降る星〜A starry night in payatas〜』
【 文 】山口千恵子
【 絵 】葉祥明
【装 丁】水崎 真奈美
【価 格】1,500円(税別)
【頁 数】100ページ
【判 型】22.0×15.6×1.4cm
【出 版】中央法規出版(2016年2月14日)
【特 長】プロローグ 心の声
アンナの一生
バイバイ、スターシティ
ビニールいっぱいの愛
神さまからのギフト
最高のおもてなし
街中のマリア
はじめてのサンタクロース
優しいうそ
最期に食べたいもの
手のひらのお星さま
エピローグ その日特別きれいな花
<04-05ページ>(一部抜粋してご紹介します)

<08-09ページ>

私は目の前の光景に圧倒され、ただその場に立ちすくんでいました。手にはカメラを持っていましたが、一度もシャッターを押すことはできませんでした。
なぜ、この人たちはここに生まれてその人生を生きているのか。 なぜ、私は日本に生まれてこの人生を生きているのか。そこに生まれた意味というものがあるのだろうか。それぞれの人生にはいったいどんな役割があるというのだろう・・・。騒音のただ中にいるのに、心の中は静まり返っていることを私ははっきりと意識していました。
その時、ひとりの少女の視線を感じました。ジョーイという名のその少女は、恥ずかしそうに目をそらせながらも、そこにたたずんでいる場違いな外国人が気になっている様子でした。そしてその外国人が近づいて来るのを、ちらちらと気にしていました。やがて、彼女の前で足を止めた時、真っ直ぐこちらを見つめ返しキラキラした瞳でこう訊いてきたのです。
「あなたは生きていますか? 本当の意味で、生きていますか?」。
<24-25ページ>

<48-49ページ>

<54-55ページ>

「先生、あの……サンタ……クロースって何ですか?」。
他の子どもたちのはしゃぐ声にかき消されそうでしたが、マリー先生にははっきりと聞こえました。12才の少女がサンタクロースを知らない……。それは、その子の家がどんなに貧しいのかを物語っています。マリー先生は新米でも、ここで涙を見せてはいけないことをとちゃんとわかっていました。涙目に気づかれないよう、色紙に目を落としたまま、「サンタクロースっていうのはねぇ」と説明を始めました。するとピアの顔はみるみる明るい表情になり、こう言ったのでした。
「テディベアです。先生、私はテディベアをサンタ……クロースさんにお願いしたいです!」。うつむいて聞いていたマリー先生の指先が、ほんのり赤く染まってわずかに震えているのがわかりました。
その年のクリスマスも子どもたちには食料のおくり物がありました。その他にサンタクロースから男の子にはおもちゃのトラックやプラモデル、そして女の子には全員テディベアがおくられたのでした。
あのクリスマスから3年、15才になったピアの枕元には古びたテディベアが今も置かれているそうです。
あなたが初めてサンタクロースからもらったプレゼントは何でしたか?
そのプレゼントは今、どこにありますか?
<56-57ページ>

<88-89ページ>
