新刊のご紹介:詩画集『雲のゆくおるがん』

  • 2012.07.25 Wednesday
  • 00:00
今日ご紹介するのは前著『人生の贈り物-四つの物語-』でご一緒した
今道友信”氏と葉祥明の共著となる詩画集『雲のゆくおるがん』です。鉛筆

氏が長年温めててこられた詩の数々を拝読した葉祥明が
その内容と格調高い表現にたいへん感動し、「是非、多くの人に読んでもらいたい!」という
思いから企画がスタートし、一冊の本になりました。読書

著者の“今道友信”氏は1922年に東京で生まれ、山形に移り住みます。
その時の出来事が「盲目となったオッタヴィアのために」として表現されたり、
フランスの大学で非常勤講師として働いていらした頃の体験などが
全14編の詩となって綴られています。ニコニコ

日本を代表する哲学者が「詩」という表現方法でその感性を紡ぎ、
葉祥明がその世界観をイメージして絵画表現をしました。ひらめき

二人の魂がこもった至高の一冊、是非ご覧下さい。見る

URL『雲のゆくおるがん』のお買い求めはこちらから!back

      downdowndown(一部抜粋してご紹介します)downdowndown

【 詩 】今道友信
【 絵 】葉祥明
【価 格】1260円(税込) 
【頁 数】55ページ
【判 型】19×15.7×1.1cm(縦×横×厚)
【出 版】鎌倉春秋社(2012年5月28日)

<目次>


<4-5ページ>

盲目となったオッタヴィアのために』(全文掲載)

誰かの澄んだ声が
いつの午後も聞こえていた-----

オッタヴィア!

その声がひびくと
急に金髪のコカスパニエルが登場して
広いグラウンドを駆けめぐる。
呼んだ子は誰であっても決して動かない。
近づいてきたら
「ここだよ!」と言ってポンと手をたたく。

そのルールはみんなが泣きながら決めたのだった。

盲目となったオッタヴィアのために。

みんなとだけ遊びに来るオッタヴィアのために。

「オッタヴィア!」と呼んだら決して動かない。
近づいてきたら「ここだよ!」と言ってポンと手をたたく。

「これを破ったら仲間じゃない!」
みんながみんなと指切りげんまんをした。
半泣きの顔たちが赤い夕日を浴びていて
オッタヴィアはその輪の中に坐っていた。

いつのまにか僕らの誰も遊動円木で遊ばなくなった。
その丸太に腰掛けてスポーツを見るベンチの代わりにした。
それが当たって哀しく鳴いていたオッタヴィアを守るためにだ。
幼稚園の子が来たときだけは、本物のベンチに移った。
あんな小さな子が遊んでも丸太は強くあたりはしない。

僕らがそうしてスポーツを見たり合唱したり
話し込んでいたりすると

折々は話しかけでもするように
白濁した目に涙を浮かべてこちらの方に
顔を向けていた犬オッタヴィア。

僕の足にも顔を寄せ、体を寄せてきた。

誰かに汚いと言われ、ぶたれたのか、
昔のように人の顔に自分の顔を寄せることはなかった。
ほっぺたを舐めることもしなくなって、
目やにの流れた目を隠すようにして、
人たちの靴に鼻を押しつけて鳴いていた。

オッタヴィア!

その慎ましさがいじらしくて
そのいじらしさが可哀想で

水飲み場の水でぬらした古手ぬぐい
毎日顔を拭いてやった。
みんなが何かをしてやっていた。

そのことを喜んだのか、
そうしてもらえることを喜んだのか、
人がそうすることが嬉しかったのか、
誰にもわからなかったが、
みんなが親切だったことが、僕らの誰にも嬉しかった。

オッタヴィア!
みんなを優しくさせたオッタヴィア!

もう一度お前が来れば、みんなも優しくなるのだろうか。
人たちは今日も「捧げぇ、銃(つつ)!」と言う。


<10-11ページ>

大きな影』(部分掲載)

心の遠い野の果てのそのまた向こうに
ひとつの大きな影の棲む深い森があるらしい

その影はいつも大きかった
そこに憩えば涼しかった
そこだけそよ風が往還した。

悲しみが身の底までにしみたとき
心はいつも遠い野末のその向こうを見ていた
知らぬまにいつもその大きな影が来ていた
その中で私は身をやわらげた

(中略)

心の遠い野の果てのそのまた向こうはるかに
そこに今もまだ一つの大きな影はいるのか

目をつむって聴くと
雲のゆくおるがんの遠い音がする


<16-17ページ>

水車のある風景』(部分掲載)

村のはずれに水車があって
日のきらめきに水を運び
ひねもす音をたてている

岸には根芹の多い小川で
流れ落ちる水車のしらなみが
ざぶざぶと
垂れ葉たわむれ泡と消え……

(中略)

いつかも影と来た村はずれ
そのときも水車は水を上げ下ろし
私は時間を散り流し……

さまざまのみどりの群が多様にゆれ
今日も雲がわき崩れ
水車が水を上げ下ろし……


<40-41ページ>

はるけきに寄す』(部分掲載)

風の波濤が夜をつらぬき
私の嘆きは海となった。
魂もそこに溺れた。

波立つ夜嵐の海を
漂うものはすべて死に果て
荒れ狂う物象四散

死せる私の目の向こうはるかに
かがり火が海面を照らす。
あれは愛のかたみ。

(中略)

死とは何であろう、
おのれの時間の放棄である。
世界を少しでも神に回帰さすため、
亡びるものたちと別れること。

星はそれゆえ死の心の色にきらめく。

<42-43ページ>

晩祷(ばんとう)』(部分掲載)

紅の空が稜線を影彫るとき
黄昏の大気は
葡萄畑の斜面にひろがる。

人が青銅の像になるとき。

(中略)

そのせせらぎの
草の葉を洗う音が聞こえるあたりに
夕方は深まりゆく。

三日月のように細い塔。
夕露にぬれて光っている窓。
コメント
確かに、魂が感じられます。
  • toshi
  • 2012/07/25 6:12 AM
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